むかしむかし、今から２５００年ほども前の中国。
ある貧しい薪売りの家に、大変美しい娘がありました。
貧しい身ですから顔も汚れたままで、もちろんきれいな服も着ていません
でしたが、それでもその美しさときたらとびきりでした。
ある日彼女が川で洗濯をしていると、魚がたくさん沈んでいるのに気づきました。
あんまり彼女が美しいので、魚は泳ぐのを忘れてしまったのです。
そんなある日、彼女はある国に仕える人の目にとまり、その国の王宮に召し出さ
れることになりました。
貧しい薪売りの身から一転して、豪華な王宮に暮らす身分となったのです。
彼女が連れて行かれた国には、仲の悪い敵国がありました。
２つの国は長く争っていましたが、その敵国はかなり手強く、まともに戦って倒す
のは容易なことではありません。
そこでその国の王は、何か方法はないものかと思案していたのですが、ある時
良い考えを得ました。
彼女をわざと敵の国に差し出したのです。
その策略は見事にあたり、その国は急に弱くなっていきました。
あんまり彼女が美しいので、王は国を治めるのを忘れてしまったのです。
敵国の王はすっかり彼女に夢中になりました。
また、他にも多くの贈り物を受けて、どんどん油断してしまいました。
すっかり慢心した敵国の王は、もっと領土を広げようとしました。
美しい女性は得られるし、たくさんの贈り物はもらえるしで、自分が強く、偉く
なったように思ってしまったのでしょう。
そして今までは自分の国を大切に守っていたのにその手を緩め、他の場所
への無理な出兵を繰り返したのです。
何年かがたち、やがてその国は力を失っていきました。
そして彼女を送り込んだ国は、期が熟したと見るや攻め入り、とうとう
その国を滅ぼしてしまったのです。
その後の彼女については定かではありませんが、いくつかの説があります。
ある説によれば彼女は、一国を滅ぼした自らの罪を思い、湖に身を
投げてしまったといいます。
他には、国を滅ぼした妖怪として、皮の袋に入れられて長江に投げ込ま
れたなどという話もあります。
もうひとつの説は、ある男性に連れられてその国を離れたとするものです。
男性は立派な人物で、彼女が最初に連れていかれた国の政治家で、優秀な
軍人でもありましたが、宿敵を倒した後はその地位も財産も捨てて、新たな
生活を求めたのでした。
なにしろもとは有名な将軍ですから、素性が知れると仕官を求められました。
しかし彼は、再三に渡る権力者からの誘いを断り、商売に成功して大金持ちに
なりました。そして最後には引退して商売を子供たちに譲り、悠々自適の生活を
送ったといいます。
どれが本当のことかは分かりませんが、もしかしたら彼女は、その男性の傍らに
いたかもしれませんね。
彼女の名は、中国四大美人の一人に数えられる西施（せいし）。
本名は施夷光（し いこう）といったそうです。
先の説で、西施が身を投げたとされる湖が、今の杭州にある西湖です。
貧しい身から一転し、激動の生涯を送った彼女ですが、美人薄命という言葉の
通りでなかったとしたらいいですね。
★人物の名前やものがたりの背景、裏話。
「もうちょっと知りたい。」という方はこちらからどうぞ。↓
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■編集後記
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最近は「美しすぎる市議」や、「かわいすぎる海女さん」などが話題のようです。
題名もちょっとそれに合わせて遊んでみました。
昨日の台風で近所の川も大増水して急流になっていました。いつも鯉がたくさん
いるのですが、どこでどうしているのだろうと思いました。
で今日見たら、何事もなかったように結構いるんです。結構下流に流されて
しまったと思っていたのに、たくましいものです。
でもそんな鯉達も、西施を見ればきっとうっかり沈んでしまったのでしょう。
中国の昔話も面白そうですね。
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■今週のツアーから
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