むかしむかし、今から何千年も前、アフリカ大陸の北の外れの、海に近い場所に、
ある民族が住んでいました。
狩りを行い、木の実を拾い、木や石の道具で簡単な畑をつくって暮らしていました。
ある程度の集落は作りましたが、基本的には遊牧民として、馬と共に生きていました。
彼らのことは、馬の人たちとしておきましょう。
こうして、馬の人たちはマイペースで暮らしていたようですが、周囲では様々な民族の競争が起こり、
ある時、他の民族がやって来ました。
その民族は地中海で広く交易を行っていて、金属の道具をつくる技術を持っていました。
また、今まで知られていなかった果物も持ち込みました。
この鉄の人たちのおかげで人々は、鉄の道具で畑を耕し、様々な果物を口にできるようになりました。
しかしある時、鉄の人たちが近くに都を移して来ました。
今度は鉄の人たちは強引で、馬の人たちは奴隷にされ、せっかく作った作物も取り上げられてしまいました。
さらに鉄の人たちは、北の国と長い戦争を始め、馬の人たちを戦場に駆り出しました。
馬の人たちはもともと遊牧民族で、乗馬に長けていたため、意に反して優秀な騎兵となり、鉄の国の
大きな戦力となりました。
その一方で、鉄の人たちに反抗してはその都度負けて、再び奴隷として使われていました。
しかし、人々はあきらめず、いつか自由になることを願い続けていました。
そして、戦争による混乱の中、ついにその機会が訪れます。
長く続いた戦いの末、北の国、ローマが北アフリカに攻め込んできたのです。
事情を知っていたローマ人は、うまく馬の人たちを味方につけました。
優れた騎兵隊は、今度は自らの意思で戦い、ついに鉄の人を倒してその支配から逃れたのでした。
気ままな遊牧民から、強力な騎兵隊となった、ベルベル人。
ベルベル語を話し、自由を愛したこの民族は、この後も支配者との戦いを続けていくことになるの
ですが、それはまた別のものがたりでお話ししましょう。