19世紀の中頃、アメリカで、長い竜のような化石が発見されました。
ずっと昔に海だったところで見つかったので、大きな体をくねらせて海を泳いでいたものだと
考えられました。
発見者は、巨大な爬虫類だと思い、「トカゲの王様」という意味の名前をつけました。
ところが、しばらくしてもっと状態の良い化石が見つかり、爬虫類ではなく哺乳類だということが分かりました。
巨大なトカゲというよりも、クジラの祖先だったのです。
でも発見者の功績が尊重され、名前はそのままにされました。
それから50年ほどして、エジプトでもこの化石が発見されました。
他にもこの場所では、サメの歯や、カメや貝の化石などが見つかりましたが、「トカゲの王様」で最大のものは21mほどもありました。
他にも、もう少し小さなクジラの祖先も多数見つかり、そこは「鯨の谷」と呼ばれるようになりました。
現在は砂漠となっていますが、昔は温かい海があり、たくさんの海洋生物が暮らしていたとされています。
トカゲの王様こと、「バシロサウルス」。
バシロとは、ギリシア語で王という意味だそうです。
「ワディ・イル・ヒタン」とは、アラビア語で「鯨の谷」という意味です。
世界で初めて、バシロサウルスの後ろ足の化石が見つかった場所でもあり、多様な昔の生物の
化石が発見されたことから、2005年、エジプトで最初の世界自然遺産に登録されました。